
日本国憲法の「三原則」とは、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義のことだよ。
自民党の憲法改正案は、安全保障にかかわる憲法9条改定だけでなく、いくつもの条文が変わっているよ。自民党は「日本国憲法の3原則は変えません」と言っているけれど、実は人権保障が弱まった内容になっているよ。憲法改正がどんな内容かを分かりやすく解説するね!

教えて!あきちゃん

いいよ~
改定箇所はたくさんあるから、ここでは、いくつか気になる条文を取り上げるよ。
現行憲法
日本国憲法改正草案
第十一条
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

自民党の草案では、国民はすべての基本的人権の享有を妨げられないの「妨げられない」が無くなっているね。
他の条文も、憲法で個人の尊厳について言及する文章でいろんなところが「妨げられない」が「保証する」という文言に書き換わっているよ。
13条、19条、29条2項も読み比べてみてね!
(基本的人権の享有)
第十一条
国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。
憲法は、国家権力者が好き放題に権力を使わないように規制するものなんだ。けれど、自民党の憲法改正草案は、政府が国民に押し付けるような内容になっているよ。
本来、国民の権利は「国から与えられているもの」ではなく、「国家権力者が国民の基本的人権を守らなければならないもの」なんだよ。

人権の本質に消極的自由権という「国が権力を使って妨げてはならない国民の権利」という考え方があるのだけど「妨げられない」から「共有する」という弱い言葉にかきかえることで、「妨げられない権利」の強さを節穴にしようとしてるんだね。
自民党の日本国憲法改正草案の問題点は「憲法とは何か」について根本的な理解が異なって書かれている点なんだ。
まずは11条を見てみるよ!

現行憲法
第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
日本国憲法改正草案
第十三条
全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。
「個人」という言葉は「人格の主体」で「思想や言論の自由を持ってる人間」の定義のことなんだけど、これを「人」という曖昧な文章に替えることで、人格の主体を尊重せねばならないニュアンスが薄まってしまってるよ。個人という言葉に含まれる大切な意味を消そうとしてるそれ自体がだいぶ危険だよね…

現在の憲法では、個人の自由を尊重するなかで、人と人がぶつかり合った時に、個人間の権利を調整するために「公共の福祉に反しない限り」個人の権利を尊重するという調整原理だったんだ。
けれど、自民党の改正草案では、国民は「公益や国全体があってこそのものである」という内容になっているよ。つまり「公益に反しないよう個人は我慢しろ」ということだよ。
「公共の福祉」から「公益および公の秩序」に反しない限り、に書き換えられてるね。
すべての国民は「個人として尊重される」から「人として尊重される」に変わっているね。
なぜ「個人」を骨抜きしたの?
29条2項も読み比べてみてね!
次は、13条を見てみるよ!
現行憲法
日本国憲法改正草案
それって、民主主義国家じゃないみたいだね…。
第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

(表現の自由)
第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
「公益および公の秩序を害する活動は認められない」と言うことは、ネットでの発言や、集会やデモが「公の秩序」を乱していないか国がチェックする可能性はあるね。
自民党の草案では、新たに項目が付け加えられているね。これって、公の秩序を乱したとして集会やデモが弾圧される可能性があるのかな?
公益に反すること、つまり国にとって都合が悪かったらデモなどは厳しく扱われ、多くの人がビビって集会を開くことを控えるようになるかもね。

次は、21条を見てみるよ!
現行憲法
第九十六条
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
日本国憲法改正草案
第百条
この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする。

国をつかさどる憲法を、そんなに少ない人数の賛成で改定できるようになって大丈夫なのかな…?
この憲法改正草案が制定されたら、議員の「三分の二以上の賛成」ではなく「過半数の賛成」で憲法が改正できるようになるね。
従来より少ない議員の賛成で憲法を改定できるよ。自民党は、簡単に改憲できるようにしたいんじゃない?

次は、96条を見てみるよ!
現行憲法
第九十七条
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
日本国憲法改正草案
削除

国民の権利を明記している、この97条を削除しても大丈夫なのかな??
自民党の草案では、97条がまるごと削除されているよ。
憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利であったけれど、この権利を無くすということだね。

次は、97条を見てみるよ!
日本国憲法改正草案

自民党の改正草案の憲法99条は、緊急事態条項を盛り込んで新たに作られた条文だね!
(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条
緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。
もし憲法99条が新設され、緊急事態宣言が発せられたら国会で議論しなくても内閣は法律と同等の政令を出せるようになるよ(国会の承認は事後でOK)。しかも、衆議院は解散されず、両議院の議員の任期を延長できる特例を設けることができるよ!

この条文を新設したら危険でだよね??

この憲法99条が新設され、緊急事態宣言が発せられたら、議員は永遠と任期を続けられるよ。緊急事態という名目でずっと政権を続けられたら、日本は独裁国家になってしまうね。
次は、99条を見てみるよ!
自民党が憲法改正したがる理由は何だろうね。本当にこの憲法で良いのかを、国民はよく考える必要があるね。
日本を守るために「自衛隊」の明記や「緊急事態」への対応を記載する必要があるならば、その条文だけ改正すれば良いのに、自民党の憲法改正草案は、安全保障にかかわる9条だけでなく憲法全体が改正されているよ。
あきちゃん、いろいろ
教えてくれてありがとう。


自民党の草案は、現在の憲法より人権保障を弱めた内容になっているよ。よく読んでみてね!
(掲載している憲法改正草案の条文は2024年5月現在の内容です)
自民党の憲法改正については、この動画で詳しく解説しているよ。みんな見てみてね!